別れの季節に思う

長いあいだ続けてきた本読みの仕事をやめることになった。
依頼主の良治さん(仮名)の体調が悪くなられたからだ。


もともと、ご病気があったところに、87歳というご高齢である。
1時間すわって聞くのはしんどかろうと、「楽にしてくださいね」と言っても、
いつもきちんと正座したまま聞かれていた。


体調が悪くなられてからは、ベッドで横になったまま聞いてもらう日もあったが、
お声だけは元気でいつもと変わらず、正直そんなに悪いとは思っていなかった。


昨日、伺うと良治さんはパジャマ姿のままベッドに横になられていた。
脇にポータブルトイレと車椅子が置いてあった。
先週伺ったときはなかったものだ。


「こんな状態なので…」と、丁重に断りを述べられた。
本読みはやめ、いろいろと、お話を聞かせていただいた。


そのなかで印象に残った言葉があった。


人生いろんな出来事や出会いがありましたけど、いまふりかえってみると、
バラバラに見えてたことが、全部つながってたというのがわかりました。
点が線になったんですな。この年になって、そういうことが見えてきました。


人生は、いま思うと、あっというまで夢のようでしたな。



戦争から帰ってくるなり、20代で亡きお父様のかわりに家業を継ぎ、
父親代わりになって弟さん妹さんを育て上げたそうだ。
苦労人の言葉だけに胸に響いてくるものがあった。


「点」とは言葉を換えると、「縁」だと白猫は思う。
いろんな縁がつながって、自分の人生が成り立っている。
良治さんは、「生かされている」と言われていた。


他にもふしぎな夢の話など、印象に残るお話があった。
その夢のなかには白猫も出てきたそうだ。


良治さんが白猫に一冊の本を示して話をしていたと言う。
「ふしぎの章」と言うページだったそうだ。
話しているふたりを、どこからか、もうひとりの良治さんが見ている
というような状況だったらしい。


ふしぎと言えばもうひとつ、夢に神社の名前が出てきたので、
あとで調べてみると、滋賀県と四国に実在する神社だった。


息子さんに、ただの夢やとわらわれたそうだが、その話をすると
「ぼけたんやなくて安心しました」と笑われた。


点がひとつの星だとすると、無数の星が集まり、きらめき合って、
その人の星座を形作っているのだとも言える。


良治さんの星座のささやかな一点になれてよかったなと、
良治さんの笑顔を見ながら思った。


読みかけの『最澄』を最後まで読めなくて残念だが、
ご回復をお祈りしつつ、お宅をあとにした。



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春は別れと出会いの季節ですね。
御室川の早咲きの桜が咲き始めています。
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[ 2013/03/17 05:58 ] 介護 | CM(0)
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